にじゅうきゅうこめ

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こういう女はある意味、羨ましい。 素直なんだろう。 だけど今の私には迷惑。 あなたを悩ませるのは私だけでいい。 あなたのそばにいるのは私だけでいい。 共有なんてできない。 あなたの優しさにつけ入ろうとするのが憎くも思う。 唯人さんがいいからユウさんをダシにしているというほうが、こんなライバル心みたいなものを考えたりしなかった。 「遅すぎ。彼が再婚を決める前なら、いくらでも受け止めてくれたかもしれないけど。今は私がいるから無理」 私は電話の向こうにはっきりと言いきった。 受け止めたいと言われても、受け止めさせてやらない。 そんな気持ちも含めて。 『……イサミ出して』 電話の向こうの声は泣き声が止まって、どこか怒っている。 ユウさんに話そうとしていたことを私が聞いたのだから怒っているのだろう。 修羅場は嫌なんだけど。 渡したくない。 その気持ちが強い。 「恵子さんが甘えた態度みせるから逃げちゃったみたい」 私はユウさんを見て言ってあげる。 ユウさんは顔を上げることもなく、降参したまま。 かっこ悪いと思う。 でも私に任せてしまうくらい、これは仕事の再建よりもユウさんにとってつらいことなのかもしれない。 『恵子って呼ぶな。…イサミの女?……そいつ、見た目より女に甘すぎるから。奪ってあげる』 さっきの泣いていた声がかわいく思えるくらい、どこか敵意むき出しの声で言われた。 「甘すぎるよね。結婚の意味もないくらい、すべてに裏切りまくりだったあなたのこと、今更なのに気にしちゃうんだもん。……でもそんな優しい彼が私は好き。自慢の旦那様。誰にこわがられたってかまわない」 『ノロケいらないんだけど』 「もっとノロケようか?私のこと美人っていつも誉めてくれるの。笑うとかわいくて撫でまくりたいくらい。キスしたらなかなか離れられなくて、ずっといちゃついちゃう。お金目当てにされること、よくあるみたいだけど、私、彼がいればそれでいい。彼といると沈んでいても元気になれる。ちょっと離れたらそれだけで不安になって淋しくなって…」 そんな、誰にも話せなかった私のユウさんへの気持ちをひたすら聞かせてあげると、電話は切れた。 失礼な人だ。 もっと聞いてほしかったのに。 私も聞かされたくないけど。
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