さんじゅっこめ

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憎くも思った相手だし、複雑なものはあるけれど。 素直におめでとうが言える関係までに戻れたのはよかったとする。 贔屓にしているつもりはないけど、隆一くんのやる気が贔屓にさせたとも思う。 隆一くんのことで気になるのは、あとは女関係なのだけど。 そのプライベートなことは話すこともない仕事の関係。 膨らみつつあるお腹を気遣いながら、やれることはやるけど、そろそろ大変になってきたかと思われる。 服もまとまると重い。 重なった段ボールを床におろしたり、棚をかえようと什器を動かそうとしたり。 そのあたりを隆一くんや北さんという前からいるバイトが手伝ってくれるありがたさを感じる。 あと二人、バイトがいるのだけど、一人は私にケンカを売るような態度をくれた子で、もう一人はあまりバイトに入れない子で。 自分で雇ったといっても、ノリや気が合わないと思う人も中には出てくる。 だからって解雇できるわけでもない。 不当なことをすれば自分にいずれ跳ね返ってくる。 不当なことをしていなくても、嫌なことはあったりする。 常にいつも自分の思い通りにいけば楽しく過ごせるのに、楽しくないときもある。 そういうものと思っていないとやっていられない。 隆一くんが帰ったあと、二人のバイトに店内を任せて、私は私の仕事をしていただけなのだけど。 陰口のように私のことを話している声が聞こえてきた。 うんざりしながらも働いていると、ユウさんが店に久しぶりにきた。 「いらっしゃいませ」 いらっしゃいましたと言われる前に言ってあげる。 「いらっしゃいました。今日はちゃんと買い物だよ。トシにあげられるようなもの、なんかない?あいつもスーツばっかりだし、ネクタイとかシャツにしたらいいかとも思ったけど、仕事よろしくってしているみたいだし、違うもの見繕おうかなって。しずちゃんのセンスで選んでもらっていい?」 「好みもわからないのにいいんですか?お中元みたいなものにしたらよくないですか?タオルとか食べ物とか」 「店員モードしずちゃんに奥さん入ってる」 ユウさんは楽しそうに笑う。 そうかもしれない。 お世話になっているから贈るのなら、お中元の季節かなって。
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