さんじゅっこめ

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ユウさんと畑中くんのお話は相変わらずかもしれない。 いつものことのように少しふざけたものも混ざりながらの会話。 ただ撤退の色が濃くなってきている気がする。 どう考えても今の状況では以前には戻れない。 ずっとその仕事を続けていてほしいと思ったことはないけど、金銭面で不安になる。 今のところは私も働いているし、生活に支障はないのだけど。 なんにもしてあげられないのがもどかしい。 とりあえず逃げるように休みたいとは思ってはいられない。 「だからネット通販っていうのもありかなとは思ってる。でもどう考えても大手には負ける。唯人さんにモデルしてらったら稼げそうとは思うけど、そういう扱いにできる人でもないからね。しずちゃんがモデルするのもありかな」 唯人さんのところまでは普通に聞いていたけど、私がモデルというところに思いきり拒否をしてあげる。 それだけは却下。 たまにビルのチラシを入れるとかで、うちの店のものも掲載してくれるというから、モデルと服を用意することもあるのだけど。 今まで服しか載せてもらったこともない。 他の店は店員に店の服を着せてモデルにすることもある。 プロのモデルを持ってくるほどの掲載面の大きさや量でもないからというのもある。 「畑中くんがモデルを…」 なんて押しつけてみる。 「俺、自慢じゃないけどユウさんより背も低いし、ガリガリなんで。ユウさんがやればいいんですよ」 畑中くんもさらりと逃げてくれる。 「俺ができるわけない。やってみても唯人さんくらいの影響力ある人の助力がなけりゃ、今の仕事と違って借金重ねるだけだ。裏仕事ならプロダクションとか回してもらえるけど、そっちはさすがに手をつけたくないし」 「プロダクション?芸能事務所?」 「そう。ただし裏側ね。アダルトビデオのプロダクション。事務所としておいておくだけでいいんだけど、阿漕な商売だよ。俺、そっちまでいきたくない」 さすがヤクザ。 そういうこともどこかでしているらしい。 でもユウさんはそこまででもないらしい。 今の仕事をやるようになったきっかけも、それ以前も。 けっこうまとも。 「楽でもなかったけど、楽して稼いでいたツケがまわってきたかな…」 ユウさんのそんな呟きにもどかしさは膨らむ。
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