473人が本棚に入れています
本棚に追加
奥様のいた人に手を出したのは過去の私。
それと違って救いなのは、ユウさんが恵子さんに片寄っていないこと。
私に隠れてユウさんが恵子さんと会っていたりしたら、本気で泣ける。
「二度とかけてこないで。メールも迷惑」
『私にとってはあんたが迷惑。さっさと別れてよ』
「別れないから他を探してくれない?」
ものすごく修羅場な会話をしてしまっている。
これが恵子さんじゃなくて、瞳ちゃんとかユウさんが過去に家を買ってあげた人とかだったら、こんなふうになれたかはわからない。
負い目が私にまったくなければなれるかもしれないけど。
『あんたが探しなよ。イサミよりいい男なんていっぱいいるよ。唯人なんてどう?あれも優しいよ。イサミよりイケメンだし金持ちだし』
「疲れるまで連れ回されるから却下」
あと、チャラチャラしたのはあんまり好きじゃない。
同じイケメンでも須賀さんならちょっとは悩めたかもしれない。
仕事のつきあいしかないし、妻子持ちだし、考えるまでもなく、そういう相手じゃないけど。
『……連れ回してもらったことないんだけど』
「唯人さんのほうが疲れるつきあい方してるんじゃない?他の男の相談なんてされたくないのは当たり前だと思うし、返事しなくても一方的にメールを送られるのもあんまりいいものじゃないし」
唯人さんはメールを送りまくっていたけど。
あれは返事をしないユウさんへの嫌がらせもあったと思う。
唯人さんの力を考えると、その程度にしてくれたとも思う。
恵子さんのことじゃなかったら、会社を潰されていたかもしれない。
『わかってるけど、唯人にかまってもらう方法、他にないんだもん。しつこくやっていれば、そのうち気が向いたら返事くれるし』
「やっぱりダシだったってこと?」
『だけでもないってば。イサミを怒らせないで会うの、唯人が仲介してくれるのが一番だって思っていた。……結局、唯人使ったことにめちゃくちゃ怒られたけど』
なぜかどうしてか、修羅場から普通に会話をしてしまっている。
最初に思ったまま、素直だ。
自分に正直。
ユウさんを騙して結婚したのはなぜだったのかはわからないけど。
優しいから騙されてくれると思ったような気もする。
最初のコメントを投稿しよう!