さんじゅっこめ

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奥様のいた人に手を出したのは過去の私。 それと違って救いなのは、ユウさんが恵子さんに片寄っていないこと。 私に隠れてユウさんが恵子さんと会っていたりしたら、本気で泣ける。 「二度とかけてこないで。メールも迷惑」 『私にとってはあんたが迷惑。さっさと別れてよ』 「別れないから他を探してくれない?」 ものすごく修羅場な会話をしてしまっている。 これが恵子さんじゃなくて、瞳ちゃんとかユウさんが過去に家を買ってあげた人とかだったら、こんなふうになれたかはわからない。 負い目が私にまったくなければなれるかもしれないけど。 『あんたが探しなよ。イサミよりいい男なんていっぱいいるよ。唯人なんてどう?あれも優しいよ。イサミよりイケメンだし金持ちだし』 「疲れるまで連れ回されるから却下」 あと、チャラチャラしたのはあんまり好きじゃない。 同じイケメンでも須賀さんならちょっとは悩めたかもしれない。 仕事のつきあいしかないし、妻子持ちだし、考えるまでもなく、そういう相手じゃないけど。 『……連れ回してもらったことないんだけど』 「唯人さんのほうが疲れるつきあい方してるんじゃない?他の男の相談なんてされたくないのは当たり前だと思うし、返事しなくても一方的にメールを送られるのもあんまりいいものじゃないし」 唯人さんはメールを送りまくっていたけど。 あれは返事をしないユウさんへの嫌がらせもあったと思う。 唯人さんの力を考えると、その程度にしてくれたとも思う。 恵子さんのことじゃなかったら、会社を潰されていたかもしれない。 『わかってるけど、唯人にかまってもらう方法、他にないんだもん。しつこくやっていれば、そのうち気が向いたら返事くれるし』 「やっぱりダシだったってこと?」 『だけでもないってば。イサミを怒らせないで会うの、唯人が仲介してくれるのが一番だって思っていた。……結局、唯人使ったことにめちゃくちゃ怒られたけど』 なぜかどうしてか、修羅場から普通に会話をしてしまっている。 最初に思ったまま、素直だ。 自分に正直。 ユウさんを騙して結婚したのはなぜだったのかはわからないけど。 優しいから騙されてくれると思ったような気もする。
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