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「ユウさんはあげないから、他を探して」
もう一度言ってみる。
『イサミがいい。金持ちだし優しいし』
「今はお金ないの。ちょっと問題あってやり直したら、前みたいにうまくいかなくて撤退したほうがいいのかなって考えるくらい。前までなら、ユウさんのことだからお金欲しいって言われたら、私に隠れてでもぽいって渡していたと思うけど。それができないの。なるべく節約して生活しているんだから」
『なにそれ?なに?なにがあったの?イサミ、とうとう騙された?今の仕事もヤクザにいいように扱われて騙されてるんだって思っていたけど。唯人が戻ってきているのもそういうこと?』
なんて、どんどん質問されて、私はなぜか恵子さんと長電話となる。
誤解はさせていられないし、ちゃんと話さなきゃと思ったら長電話。
ライバルみたいなもののはずなのに、恵子さんに釣られてしまう。
気がつくとユウさんが洗い物をしてくれて、服もちゃんと整えて家を出る準備を済ませて、私が使っている携帯を待っている状態になっていた。
「もう電話切らないと。これ、ユウさんの携帯だから」
私も焦って言ってみる。
『まだわかんない。唯人もイサミもそういうこと話してくれないし、また教えてよ。えと、なにさん?』
「近藤静葵」
『しずちゃん、イサミから私の番号聞いておいて。かけてくれたらかけなおすから。こっちもまひるがうるさいから切る。
ちょっと、まひるっ。寝ろっ』
なんて言葉と一緒に電話は切れた。
…友達じゃないはずなんだけど。
私は切れた電話を眺めながら思う。
ただ、ユウさんがお金をあげられないことはわかってくれたかと思う。
ユウさんの視線を感じてユウさんを見て、手にしていた携帯を返す。
「ちょっとは解決してくれた?仲良さげに話していたけど。あいつ、調子にのってたんじゃないか?大丈夫?」
仲良さげに聞こえてしまったらしい。
私もケンカ越しにはなっていなかった気がする。
「そのうち唯人さんにかまってもらう方法、教えることになるかも」
「しずちゃん、最強だね」
そういうつもりはないのだけど。
恵子さんとはわかりあえる気がする。
うちの働かないバイトよりは。
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