さんじゅういっこめ

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どんな仕事だって自営じゃなくたって、クビや倒産はある。 いつ何があるかはわからない。 「ユウさんの会社の人は反対しなかったの?」 「パソコン部隊の奴らがオシャレなんてわからないのにやっていいのかって言っていたくらい。あいつら、ちょっともさすぎるから、その分野を学んで彼女つくれたらいいんじゃないかと思ってる」 「って全員雇っていられるだけくれるのっ?」 「高給は難しいけど、バイトにも手伝ってもらうつもりだよ。というか、ネット管理じゃなくて小売業やれって幹部たちに言われてるから、本当に服や服飾の販売も始めると思う。その営業認可とるまでは管理だけ。 ……潰れない。デリヘルも続けていても潰れない。赤字出したら殴られるだろうけど。組合入ってるからね、俺。能無しと判断されるまでは放り出されることはないよ」 組合…。 そういえばただの自営でもなかった。 ユウさん一人でやっているように見えるけど、協力してくれる人がいるんだった。 デリヘルを始めたのもユウさん一人で始めたんじゃない。 逆に言えば、その組合から抜けるのが大変だと思う。 「ユウさんって組合の幹部?」 「俺の事務所の下の店の人がそう。俺はその下。はっきり言って唯人さんと直接関わることもない立場だけど、唯人さんがよくしてくれているだけ」 禿げたおじさんを思い出す。 全然こわい人でもなかったけど、やっぱりこわい人だったらしい。 ユウさんの上司みたいな人かもしれない。 …言われてみれば親しみやすさがどちらにもあるのかもしれない。 そしてやっぱり組合から抜けるのは難しそう。 とても助けていただけているから悪い組合でもないのだろうけど。 「だいたいは理解してもらえた?馬鹿息子だけど、親父さんが倒れている今、唯人さんの力ってすごいんだよ?幹部に誕生日祝ってもらうくらい、今の唯人さんに頭が上がる人は組合にはいないよ?俺が殴られるようなことがあっても、しずちゃんは何もされないように唯人さんが守ってくれるって意味、わかってくれる?」 そこまで言われて理解できたような気がする。 そしてそんな人の子供がここにできてしまっていて、予定日までもう少し。 ……なんであれとえっちしてしまったのか。 縦社会、関係ないけど、嫁になったら関係ある。
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