468人が本棚に入れています
本棚に追加
/325ページ
抜けたいと思うようなひどい扱いもないけど、たぶん一生抜けられない組合。
気がつくと私もそこに入っていることになる。
極道の妻。
そういうことになる。
私、普通の人のはずなのだけど。
「俺も殴られたくはないし、叱咤激励されるよりはかわいがられているくらいがいいし、ない頭使ってがんばってるんだよ。静葵に俺と結婚したことを後悔させないように、やれることやってる。もう後悔したって言われてもおかしくないこと、今までの間でじゅうぶんあったとは思うけど…。一人でいるよりはがんばってるつもりなんだよ。おまえといたいから」
ユウさんは私をじっと見つめたまま、まだお話をしてくれる。
説得されているということになるのだろう。
勝手に決めたけど、私が理解して納得するまでずっと話してくれそう。
というか、口説かれているような気もして、ちょっとうれしくて恥ずかしい気持ちにもなってきた。
じっとじーっと私の目をまっすぐに見てくれるのが、どこか恥ずかしい。
恥ずかしいけど、改めてその顔を眺めて、私には心をときめかせる男前な顔だと思う。
初めて見たときから、私にはかっこよく見えた人。
かっこ悪い姿もたくさん見たし、嫌な気持ちもたくさんくれたけど。
大好き。
腕を伸ばして引き寄せようとすると、近づいてくれる。
そのまま頭を抱いてキス。
唇に長く、息が切れそうになるまで。
ユウさんは私のキスに目を閉じてキスを返してくれる。
胸が満たされて、唇を離して目を開けると、ユウさんも薄く目を開けて私を見てくれる。
「ついていく」
心を決めて告げた。
ユウさんの目が細められて、うれしそうに笑ってくれる。
その腕が私を抱きしめてくれる。
かわいがるように頭を撫でてもらえると、うれしい。
極道の妻でもなんでもいい。
そばにいたいのは私。
ただ、失敗してユウさんが倒れてしまわないようにしたいという気持ちだけは譲らないけど。
殴られるユウさんも見たくないから、私だって何かをしたい。
あなたががんばってるの、ちゃんとわかってる。
最初のコメントを投稿しよう!