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「恵子さんはお金、大丈夫なの?お金欲しかったんでしょ?」
『……贅沢しなかったら生活保護とパートで暮らせる。あと、唯人が金くれた』
「唯人さん、ばら蒔きすぎ…」
『じゃなくて。寿人の子供だって唯人にちゃんと言ったら、金くれた。あ、寿人って唯人の弟ね。事故ってもう死んじゃったけど』
恵子さんはさらっと言ってくれる。
ユウさんの予想通りの父親だったらしい。
私はまったく知らないけど、そうわかるようなことがあったのかもしれない。
「なんでユウさんに嘘ついて結婚したの?」
『私、イサミとも寿人ともつきあってない。寿人とはセフレ。イサミはノリで一回したかそれくらいの友達だった。寿人、彼女いたし。でもおろすのこわかったし。一人で生んで育てるのもこわかったし。……イサミ、優しいから。寿人じゃない誰かって思ったら、そのときの私にはイサミしかいなかった。今もいざというときには頼ったらいいんだって思ってしまう。
寿人の兄だっていっても、唯人のことほとんど知らなかった。寿人の葬式のときに会って、唯人に父親になってもらったらいいんじゃないかって思った。寿人、もういないし。だから別れた。でも唯人、寿人とは違って女嫌いで。まひるはかわいがってくれるけど、まったくダメ。イサミと結婚続けておけばよかったって何回、悔やんだことか』
嘘はなさそうに思う。
「自分勝手なことしてくれてありがとう。おかげでユウさんのそばにいられています」
私はそんな嫌みをあげる。
『……しずちゃん、たまにひどいよね。イサミ、とる理由なくなったからとらないし、優しくして?お姉サマ』
「私に甘えてるよね?」
『うん』
素直に肯定されて、どうしたらいいのかわからない。
恵子さんがいたから、今のユウさんがいるとも言える。
ユウさんを傷つけてくれてありがとうとは言えないけど。
失敗や間違いも無駄なことではない。
そう思う。
「キスしてあげようか?」
半分からかって言った。
『してしてー。レズろう?私、最近、まひるとしかキスしてない。しずちゃん、いっぱいキスしよ?』
思いきり乗ってこられて私が困る。
かわいいのだけど。
ユウさんに怒られるから、さすがにそれはできない。
彼女に恋愛をしてもらいたくなった。
相手は隆一くんでどうだろう?
私の恋愛のリハビリ相手。
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