さんじゅういっこめ

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「恵子さんはお金、大丈夫なの?お金欲しかったんでしょ?」 『……贅沢しなかったら生活保護とパートで暮らせる。あと、唯人が金くれた』 「唯人さん、ばら蒔きすぎ…」 『じゃなくて。寿人の子供だって唯人にちゃんと言ったら、金くれた。あ、寿人って唯人の弟ね。事故ってもう死んじゃったけど』 恵子さんはさらっと言ってくれる。 ユウさんの予想通りの父親だったらしい。 私はまったく知らないけど、そうわかるようなことがあったのかもしれない。 「なんでユウさんに嘘ついて結婚したの?」 『私、イサミとも寿人ともつきあってない。寿人とはセフレ。イサミはノリで一回したかそれくらいの友達だった。寿人、彼女いたし。でもおろすのこわかったし。一人で生んで育てるのもこわかったし。……イサミ、優しいから。寿人じゃない誰かって思ったら、そのときの私にはイサミしかいなかった。今もいざというときには頼ったらいいんだって思ってしまう。 寿人の兄だっていっても、唯人のことほとんど知らなかった。寿人の葬式のときに会って、唯人に父親になってもらったらいいんじゃないかって思った。寿人、もういないし。だから別れた。でも唯人、寿人とは違って女嫌いで。まひるはかわいがってくれるけど、まったくダメ。イサミと結婚続けておけばよかったって何回、悔やんだことか』 嘘はなさそうに思う。 「自分勝手なことしてくれてありがとう。おかげでユウさんのそばにいられています」 私はそんな嫌みをあげる。 『……しずちゃん、たまにひどいよね。イサミ、とる理由なくなったからとらないし、優しくして?お姉サマ』 「私に甘えてるよね?」 『うん』 素直に肯定されて、どうしたらいいのかわからない。 恵子さんがいたから、今のユウさんがいるとも言える。 ユウさんを傷つけてくれてありがとうとは言えないけど。 失敗や間違いも無駄なことではない。 そう思う。 「キスしてあげようか?」 半分からかって言った。 『してしてー。レズろう?私、最近、まひるとしかキスしてない。しずちゃん、いっぱいキスしよ?』 思いきり乗ってこられて私が困る。 かわいいのだけど。 ユウさんに怒られるから、さすがにそれはできない。 彼女に恋愛をしてもらいたくなった。 相手は隆一くんでどうだろう? 私の恋愛のリハビリ相手。
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