さんじゅういっこめ

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ユウさんには殴られるかもしれない。 それでも唯人さんに連絡をとって、恵子さんとまひるちゃんも一緒にお父さんに会いにいくことにした。 唯人さんに案内してもらった病室、確かに厳ついと思えるおじさんというよりもおじいちゃんな組長さんは、ベッドに横になったまま起きる気配もなかった。 病室の付近にいたこわそうなおじさんたちのことは気がつかなかったことにしておく。 組長さんというのも今は忘れよう。 朔の本当のおじいちゃん。 それだけでいい。 朔をおじいちゃんの隣に寝かせてみた。 それだけでちょっと私が満足。 「言っただろ?会わせても意味ないって」 唯人さんは言いながら、ベッドに座って、朔にふれる。 乱暴にしてくれるかと思ったけど、壊れ物をさわるかのように優しい手で。 本当のお父さんにもふれてもらえた。 それでいい。 「まひる、あれ、おじいちゃんだよ。初めて会うよね。私も初めて」 なんて言っているのは、金髪でゴスロリでもない、普通のかっこしている恵子さん。 普通のかっこしていたら普通に普通だ。 ケバい感じでもなくて、普通にお母さん。 「おじいちゃん…。寝てるの?」 まひるちゃんは恐る恐るベッドに近づいて、おじいちゃんを見る。 「たまに起きる。……って起きたしっ」 唯人さんは慌てたように朔を抱いてベッドからおりて。 私は起きたというおじいちゃんを見る。 目が合ってしまった。 おじいちゃんは不思議そうにあたりを見て、状況を少し把握して唯人さんを見る。 唯人さんがかたまったように何も言わないでいると、また目を閉じて。 そのまま。 また眠ったらしい。 「あー、こえ。親父、こわ。孫見たって喜ばないから、さっさと帰ろう」 唯人さんは朔を抱いたまま病室を出ようとして。 「それ、孫かっ?」 大きなおじいちゃんの声に思いきりびくっとしてしまった。 唯人さんも恵子さんもまひるちゃんもびくっとして。 朔も泣き出した。 唯人さんは困ったように私に朔を返して、私は朔をあやす。 「そっちが嫁か?」 「どっちも嫁じゃないです。けど、ガキ二人とも親父の孫です」 唯人さんはおじいちゃんに答える。 敬語だ。 おじいちゃんの質問は続いて、唯人さんが答えるのが続いて。 おじいちゃんは最後には笑った。 唯人さんと私のえっちの話を唯人さんが正直にしてしまったからと思われる。 後ろから首を絞めるのはさすがにできなかった。
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