第1章

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町から少し離れた店で一緒にご飯を食べた。 お魚が食べたいと麻美が言うから、 そんな店を探しながら、 新幹線に乗れる駅まで送るよ。と、 浩二の車で一緒に。 「やっていけるの?生活」 やはりその方が心配。 「うん。お店で働いてたときの貯金もあるし。 結構びっくりするほどいただいてたの。お給料。 落ち着くまではホテルに居るの。 そのうち部屋でも借りて… 何かできる仕事を見つけるつもり。 今はまだ、あてはないけど」 強いね…ほんと、麻美は。 だけど、 少しは頼ってよね… 「何でもいいからさ、 時々は電話してよ? いつでもどこでも飛んでいくからさ…」 新幹線駅に着いて麻美の手を握る。 心配でたまらない。 きっと麻美のご両親も同じ。 ううん…きっと私よりも何倍も… だけど、 その話はしない。 麻美を余計に苦しめることを知ってるから。 手を握り替えして、 うん、絶対。と 「浩二くん、ありがとう。 遠いところまで送ってくれて。 優子のこと、よろしくお願いします…」 私の心配なんてして… 車から降りて、 小さく手を振って、にっこりと笑う。 笑い返すと、クルリと駅を向いて歩き出して… 駅の灯りの中に吸い込まれていった。 そして私は、 ひとこと言ってやろうと、 電話をかける。 「もしもし青山さんですか…」
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