第1章

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「麻美… その街から離れられないって言ってました。 そして、 あなたが本当に愛してるのは自分じゃないとも。 どう言うことですか! あなたは麻美を真剣に…って言ってたじゃないですか!」 落ち着くために深呼吸をしたけれど、 麻美の顔を思い浮かべたら、とても冷静に話せなかった。 まくし立てるように… 責めてた。 「ちょ…っとまってください。 麻美に会ったんですか! どこにいるんです! どこで会ったんですか!」 こっちが聞いてるのに! でも、なんか必死な様子も伝わってくる… 「きっと… 来ると思って待ってたんです。 免許の更新に。 一日中…何日も待って。 そうしてやっぱり現れたんです。今日。 赤ちゃんは、9月の終わりに産まれると言ってました。 大事そうにお腹を撫でてた…」 「で? 今そこにいるんですか?麻美」 「いいえ… 今日はこっちに泊まってって言ったんですけど… あの街に帰るんだって。 その街から離れられないって。 今新幹線に乗りました…」 「本当に? ありがとう! 急いで駅に向かいます!」 電話はいきなり切れて… 何よ! 何も聞けなかったじゃない!
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