第1章

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** 誰かと話をしたのは久しぶりだった… ホテルの人とか食べ物やさんの人とかは必要最低限の話はするが、 気持ちを表すものではない。 優子が待ってくれて居たなんて… 信じられない喜びと、 夢でも見てるんじゃないかという信じられない想いで… しばらくは何も言えなくて。 独りは平気だと自分に言い聞かせてた。 そうやってずっと 学生時代を過ごしてきたから。 だけど、 やっぱり独りは寂しい。 優子が前のように接してくれて、本当に涙を堪えるのがやっとで。 ちゃんとごめんなさいが言えたかどうか、 自分でもわからない。 ずっと手を握ってくれてて、 その手の温かさが私を包んでくれて。 どんなに安心したか… そして、 一緒に暮らそうと言ってくれた気持ちは、すごく嬉しくて。 だけど。 優子と浩二くん、 卒業したら結婚をすると聞いて、 そのためにバイトをして貯金をしてるとも聞いて。 その邪魔はできないと思った。 きっと優子は私があそこに帰ると、 優子の将来の幸せの邪魔をしてしまうと思ったんだ…。 優子には、 優子にだけは幸せになってもらいたい。 浩二くんと普通の幸せを…築いてもらいたい。 そう思ったんだ。 私は…この子とちゃんと生きていくから。
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