第1章

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「ゆうちゃんおかえりー!」 由里亜さんを若くしたようなはっきりとした顔立ちで、 でも、やはり50過ぎのお顔にはシワが刻まれてて。 ご苦労なさったのだろうと察せられる。 ご主人は早くに亡くされたと聞いてたから… 明るく迎えてくれた声に何よりも安心を頂けたの… 「おじゃまします… 突然お世話になることになって…」 「いいのいいの。 嬉しいのよ? 一人暮らしってけっこう寂しいの。 ゆうちゃんはぜんぜん帰ってきてくれないんだから。 自分の家だと思って、 ゆっくりしてね?」 私の荷物を持って、由里亜さんは、 「二階なの。私の部屋。 ちょっと来て?」 階段を上がる。 「ほら… ここから瀬戸内の海が見渡せるのよ? 何よりも心が落ち着くわ… 潮の香りと波の光を感じてたら…」 大きく開かれた窓からは気持ちのいい風が入ってきて… 感じる海の香り。 私の知ってるどの海とも違う。 なんか…濃い、潮の香り。 こんなに近いから? 目を閉じて、思いっきり吸い込む。 自然の気配が、 悩んでた私を勇気づけるように頬を撫でてくれて… 「いいところですね…」
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