第1章

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《おなか空いてるんでしょ?》 階段の下から声が聞こえて。 そうだ。 朝から何も食べてない。 何か食べるのが怖くて… 駅で由里亜さんが、 「お弁当でも買ってく?」 と聞いてくれたんだけど、 私は…と断った。 由里亜さんはそれに付き合ってくれて。 時計を見るともうすぐ4時。 新幹線に乗り換えたり、タクシーでここまで来るのに時間がかかったから、 いつの間にかもうこんな時間。 「おなか空いたねえ、いこ?」 由里亜さんが先に降りていって、 私もあとに続く。 和室の座卓に並べられたお料理は、 見たこともないような珍しいものばかりだった。 チイチイイカの酢味噌あえ。 チイチイイカって可愛い名前! 瀬戸内の小魚の梅煮 梅煮って。 妊娠中の私にぴったり。 ワケギの白和え ワケギの生産量日本一だって! わかめのサラダとか、 レモン鍋とか。 土鍋のふたを開けると、 レモンの輪切りがプカプカと浮いてて、 すごく可愛い見た目で。 レモンも生産量が日本一とか。 美味しいものがたくさんあってすごくいいところ。 お料理はけっこう勉強したけど、 知らない料理ばかり。 そしてそれがすごく美味しくて。 「美味しいです!」 そう言ってたくさん食べてた。
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