第1章

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「安心したよ… いっぱい食べてくれて。 顔色が悪かったから、 食欲が無いのかとか考えちゃってた」 由里亜さん… 本当にこの人と出逢えて、感謝してる。 あんな寒々しい街で… 「ユリ、帰ってんだって?」 玄関が開いた音がしたかと思うと、 声が聞こえて、同時に男の人が入ってきた。 「ちょっとカズ! お客さんなんだからね? そのずーずーしいの、やめなよね?」 ふすまを開けたところで、私の顔を見てストップモーションのように動かなくなった男の人。 私が少し頭を下げると、 その人も同じように頭を下げて… 「ちょっ…ユリ。 だれ? この人形のような可愛い方…」 「バカか! 本人の前でよくそんな恥ずかしいことが言えたもんだ! 私のカワイイ後輩。 しばらくうちで過ごしてもらうから、 あんた、ちゃんと守ってあげるんだよ? 女の二人暮らしだからさ、いろいろと危ないことがあったりするかも知れないし。 あんただけが頼りだよ?」 由里亜さん… イメージが… 言葉遣いにしても、態度にしても。 丁寧で美しいお姉さんのイメージが、 何かのリミッターを外したようにガラッと変わる。 「ま、任せとけ。 俺がついてりゃ、百人力よ…」 「百人力って。 時代劇かよ…」 そう言って笑う。 それにつられて、私も可笑しくて、 大笑いしてた…
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