第1章

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「出来るだけ帰ってくるようにするからね… 何も気を遣わなくていいから。 自分の家だと思って?」 由里亜さんは新幹線に乗るときに、 そう言ってくれた。 朝は5時に起きて、6時には家を出た。 カズさんに車で駅まで送ってもらい、私も駅まで見送りについてきた。 連休をもらえなかった由里亜さんは、これから帰って店にでる準備をするという。 『新幹線の中で眠れるから。 大丈夫』 あさ5時に起きて夕方から夜中まで仕事なんて、 すごく大変だし、申し訳ないと言うと、そう言ってくれて。 『私が産まれた病院にかかるといいから。 友達も殆どその病院で子供を産んでるから信頼できるよ?』 信頼できる病院… 由里亜さんが産まれた病院… その言葉がすごく私を安心させてくれた。 やはり、 かかってた病院は優しい先生だったけど、 私の普通じゃない環境のことを言い出すことができなかった。 どうしてとか、父親は?とか、 実家に帰れとか言われそうで、 そう言われたとしても、 帰る場所なんて、私には無いのだから… ゆっくりと滑り出す新幹線に手を振って、 見えなくなるまで見送った。 「都会って…どんなところなんだろうね… そんなにいいかね。 俺はここしか知らないから」 カズさんはボソッと言った
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