第1章

26/40
前へ
/40ページ
次へ
「ただ、人が多いだけです。 いい所だとは…思わないわ。 だけど、 あそこじゃなきゃ生きられない人も居るから…」 私もそうかも知れない。 今は赤ちゃんのためにここに来たのだけれど、 心はあの街に置いてきてる気がする。 涼さんのことが、 どうしても…どうしても。 振り返った視線の先に、昨日見た桜。 上りホームの方が近くに見えて、 花びらがまるで雪のようにひらひらと舞い広がっていた 「綺麗ですね… こんなに桜が綺麗な場所、私、知らない」 「行ってみる? 出社の時間まで少し時間があるから」 そう言ってくれてきてくれた城趾。 「もう終わりだな… 少しの風で散ってきてる。 今日明日でたぶん殆ど落ちると思うよ?」 それでも私を待ってくれてたような気がして、 すごく嬉しかったの。 きっと一生忘れないと思う。 この花吹雪。 「おばさんも仕事だから、 帰ろうか。 きっと待ってる。 一緒にご飯、食べようと思ってさ」 「はい。 ありがとう。 ここに連れてきてくださって… そして、しばらくお世話になります…」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加