第1章

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「じゃあ元気なんですね?」 少し…いや。 全身の力が抜けるほど、安堵する。 大きな息を吐き終わると、 肩が少し軽くなったような感じ… 「ええ。 あ、そうだ!」 スマホを取り出して、撮った写真を見せてくれる。 由里亜ちゃんの友達だろう、数人の男女が居て、その真ん中に、 俺の知ってる笑った顔の麻美が居て… 「笑ってる…」 笑った顔なんてもう、ずっと前に見ただけ。 一昨年の正月に麻美の家を出てから、 それからこんな顔を見れなかったんだ… 「ええ…」 何も言わずに、俺がスマホを返すのを待ってくれてた。 「ありがとうございました…」 滲む涙を気づかれないように拭うと、 にこりと笑ってコーヒーを口にする由里亜ちゃん。 外をしばらく眺めて、 「毅さん? もう麻美ちゃんはきっと大丈夫だと思うわ。 精神的に落ち着いたらオーナーと話をするように言い聞かせるから。 けっこう強情だけど、 それが一番あの子の幸せだから。 今度はあなたの番ね? それに私も一歩踏み出してみようと思うの。 実は待ってる人が居て… いえ。もう違うわね。 待ってたって言った方がいいかも。 とっくに諦めてたのかも知れない。 だけど、踏み出すのが怖かったのよ… 一緒に少しずつ、前に進んでみない?」 天使のように見えた… このとき、由里亜ちゃんが。
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