第1章

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半身をお刺身にして、 半身を塩焼きに。 アラをお吸い物にして、お隣のカズさんのご両親も呼んでみんなでご飯を食べる。 「子供らが小さいころはこうやってよく一緒にご飯食べたよねぇ?」 「そうだねえ。 カズも由里ちゃんもじっとしてなくてさ、 片方子守、片方ご飯って当番みたいにしてな?」 「独りで大きくなったような顔してさ、今じゃ偉そうな事ばっかり言うんだよ? まだまだ子供くせに」 「どこが子供なんだ! もうすっかりいい歳だ!」 「いい人も見つけられないくせに、 何がいい歳だ! いい歳って言うのはね…」 「ハイハイわかってますよ…」 掛け合いがおもしろくて、楽しい。 こんないい環境で、 私、ひとり、何もしないなんて申し訳なくて… ずっと考えてた。 何か私に出来ることはないかって… だから思い切って… 「私、何か出来るような仕事ってありますか? じっとしてると、なんか悪くって…」 そう、仕事がしたい。 何でもいいから。 いいのいいの みんなはそう言ってくれるけど、やはり… 「あ、じゃあさ、 ボタン付けとかできる? うちの工場の上がりの製品の検品とか簡単な針仕事。 手先は器用なほう?」 あ、それいい! 「はい。 手芸とか得意な方で、 縫い物は好きです!」 「でも、賃金は安いよ? 一月みっちりやっても3万とか5万とか…内職だから…」 「いいです。 お願いします。 何でもしますから…」
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