第1章

4/40
前へ
/40ページ
次へ
車の陰から出てきたあのマリアは、 大きなお腹を抱えてた。 「……あの…涼さん… 私…謝りたくて……」 居なくなって一年が経ってると言うのに、今更謝りたいだなんて。 おかしな事を行ってる場合じゃないだろう。 「そんな体でこんな冷える場所にいてはいけない。 早く帰りなさい」 不思議なもんだな… あの時はこのマリアのことで傷ついて、二度と女に心を奪われないと誓ったのに… 実際、目の前にしてもなんの感情もわかない。 ただ、どうしてここに居るのか、 そのことばかり気になって。 「部屋にはあの子が居るから… ここで待ってなきゃ涼さんには会えないと…」 「彼女に会ったのか」 「ついこの前… あの子が居たからすぐに帰りました…」 会ったのか… なんで今更。 「話したのか」 「いいえ… あ、…はい… 黙って居なくなってごめんなさいと、涼さんに伝えて欲しいと… それだけ」 なんて事だ。 マリア…いや、麻美ならそのことをそのまま受け止めたはず。 このマリアが突然に居なくなって、 その代わりに自分が…とか。 それは完全な勘違いなのに。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加