第1章

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夕暮れの駅のロータリー。 学生や仕事帰りの人々が慌ただしく動く構内に、 あのマリアは消えていく… とぼとぼと… 後悔の気配だけを残しながら。 疲れてるように見えた。 目の下には隈をつくって、 誰かに頼りたかったのか。 彼女の実家は遠くて、両親にも頼れなかったのだろう。 だからといってうちに来るのはお門違いだということぐらい、解ると思うんだが。 人の気持ちは良く解るヤツだと思っていたのに。 まだ俺が… 待ってるとでも思ったんだろうか。 あんな風に麻美も… ここからどこか知らないところに消えたのだろうか。 重い荷物を持って、 あんな風にとぼとぼと… 人混みに紛れて。 気持ちを思うと切なくて苦しい。 あのマリアが訪ねてきて、 あのマリアの状態を見て、 居なくなって悪かったと言われれば、 あのおなかの中の子供が俺の…だと勘違いしてもおかしくはない状況だったはず。 体調が悪いと、伏せってたことも、 俺に感づかれないようにと必死で妊娠を隠してたんだ… どうして気付いてやれなかったのか。 ちょっとした変化を感じ取るのが俺の仕事なのに。
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