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「見て?」
麻美がゆったりとしたチュニックの上からおなかを手で撫でる。
少しだけ大きくなったおなか。
ぱっと見は何の変化も感じられなかったのだけど、
やはりそうやって言われると、
妊娠してるのがわかる。
「この子。
今、私だけが頼りなの。
私もこの子だけが生き甲斐。
心配かけてごめんね?
それに、待っててくれてありがとう。
だけど私は大丈夫だから。
どんなことをしても頑張れる。
この子が居るから…
涼さん…
この子のことを知ってるのね…」
「うん、すごく心配してたよ?
あの人のところに帰りたくないんだったらこっちに帰ってきなよ…
もし家に帰りづらいんだったらさ、
部屋を借りて一緒に赤ちゃんを育てていこ?
私、
バイトしてるんだ。
麻美が働けない間くらい、私が何とかするしさ、
卒業したら浩二と結婚しようと思ってその資金のために貯金だってしてる。
だから何の心配もいらないよ?」
そう言って、
帰ってくるように言ったのだけれど…
「うん…
でもね。
私、あそこから離れられないで居るの。
涼さんが居るところから離れたら、
もう…頑張れなくなりそうで…
決心が付いたら連絡する。
あの街から離れる決心が付いたら…」
わかんないわよ…
その気持ち。
何でそんなに好きなのに出てきちゃったのよ…
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