第1章

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「今4ヶ月。 9月の終わりには産まれてくれるの。 すごく楽しみ…」 そう言いながらおなかを撫でてる麻美が、 何かを言い出せずに居るのが解る。 「ねえ麻美? あの人、青山さん。 麻美のこと本気で愛してるように見えたわよ? 少なくとも、 麻美の体をすごく心配してた。 帰ってあげたら? 話せばわかることだってあると思うし、 それ以上に、 その子のお父さんなんでしょ?」 麻美が何を考えて何を恐れてるのか…わからないから。 「うん… 本当に優しい人なの。 大好きな人。 あの人と居たから、 あんな悲しい過去なんて、 本当に思い出すことも無かったし、幸せだった… 毅のことだって… そりゃ… あっちで毅に偶然出逢った時には驚いて、怖くて逃げ出しちゃったけど、 今考えたら私のことが心配だったのだとわかる。 もし今度会うとしたら、ちゃんとごめんなさいを言うつもり。 それほど何ともなくなってた。 過去のこと。 涼さんが傍にいてくれたから… でもね? 涼さんが本当に愛してるのは、 私じゃないってことがわかったの… 本当に愛してるのは… 私によく似た、 もうすぐ…ううん、きっともう、 涼さんの赤ちゃんを産んでると思う、あの人。 会っちゃったから… その人に」
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