15人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「なぁに、家の旅館には出るんだよ。裸婦の守り神様が」
聞いた事の無い単語は次第に先ほどの光景と重なる。まさか、あの人が……?
「近隣で危ない事が起きると、よう守ってくれるって有名なんよ……大雪とか、洪水とか報せてくれたり」
そんな都合のいい幽霊らしいのだが、なぜ住み着いているのか分からないらしい。
私が肌を重ね合わせたのが幽霊という驚きより、難を避けられたという想いの方が強い。
「犯人は……? まだ見つかってないんでしょう?」
「いや、さっき警察車両さ乗って行ったさ、なんでもつるつるの頭の……あれ、昼間に見たかもしれんな」
川名という男なのか。気になり、車両に近づくと確かに川名らしき人物が乗り込んでいた。私と目が合うと、中指を立てて挑発し始めた。
制止する警官。彼は私を狙って、なんらかの理由で女二人を始末したのだろうか?
全ては謎に包まれたまま、翌日には旅館を出た。
後日、川名の事が全国紙に載っていた。薬物依存による錯乱状態であったそうな。
今でもあの旅館には近づいていないが、あの女の幽霊には感謝をしている。
どこで出会うのか分からないが、再び相見える時には、相手が幽霊であれ感謝の辞を述べたいと思う。
── 了 ──
最初のコメントを投稿しよう!