act.1

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ガイラス・シティ中央大学、校舎を結ぶ渡り廊下を一人の女子学生が歩いていた。 スレンダーな体躯にタンクトップとパーカーを羽織り、デニムを履いていた。 肩まで伸びた燃えるような緋色の巻き髪と、勝ち気そうな深い蒼色の瞳が印象的な美女だった。  「シャーロット!」 聞き慣れた声で名を呼ばれた彼女…今年、経済学部に入学したばかりのシャーロット・ガードナーは、あからさまにその顔をしかめた。  「待てよ、シャーロット」 背後から歩み寄って来た同学部二年の男子学生…テッド・スペンサーは、振り向こうともしないシャーロットの肩を掴んだ。  「…何の用?」 シャーロットはさり気なく身体を引いてテッドの手を外すと、硬い声で問うた。  「新しい車買ったんだよ。これからドライブに行こうぜ?」  「………」 そう言ってにっと笑うテッドに、シャーロットはその目を細めた。 テッド・スペンサー…父親が大手電気機器メーカー代表取締役である事を鼻にかけた嫌味な男。 この男は私に興味がある訳じゃない。 他の女みたいに、私が自分になびかない事が気に入らないだけ。 それも、亡くなった父が中小企業の会社員だった、中流家庭に育った小娘が…そう思っているのが透けて見えるようだ。  「…『親に買って貰った』の間違いでしょ?」  「何だとっ…!」 シャーロットが嘲るように言うと、かっとなったテッドがその手首を掴んだ。  「人が下手に出てりゃ、いい気になりやがって…!」  「…私に触らないでっ…!」 その顔を歪めて詰め寄るテッドに、シャーロットが怒鳴った時だった。
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