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「…みっともない真似してんじゃねぇよ」
低い声と共に現れた一人の青年がテッドの腕を掴み、そのまま無造作に捻り上げた。
「痛てててっ…!何しやがる!」
呻いたテッドはシャーロットから手を外し、振り向きざまに青年に殴り掛かった。
「喚くなよ、うるせぇな」
だが、青年はその拳も片手で難なく受け止め、五本の指で締めつけながら面倒臭そうに零した。
「…痛ぇっ…痛てっ…!」
「………」
テッドが再び呻き声を上げる中、シャーロットは青年を見た。
不機嫌そうにテッドを見下ろした青年は、陽光に煌めく濃い金髪と澄み渡る空のような青い瞳の、とても端整な相貌をしていた。
シャツにカーゴパンツ、ジャケットを纏った190cm近くあるだろうその体躯は筋肉質で、一目で鍛え抜かれているのが分かった。
「…お前、俺が誰か知っててやってるんだろうな…!」
「知ってるよ。テッド・スペンサー…親の金使って遊び呆ける事しか能のない馬鹿息子だろ?」
その顔を見上げてテッドが唸ると、青年は鼻で笑いそう言い放った。
「…何ぃっ…!?」
テッドがいきり立つと同時に、シャーロットはその目を見張った。
これまで、テッドに対して媚びへつらう事はあっても、これ程までに辛辣な態度を取る人間など見た事がなかった。
「これは知ってるか?テッド。お前に群がってる女は皆、お前じゃなくてお前の親の金が目当てだって?…彼女は違うみたいだけどな」
小馬鹿にした口調で更に告げた青年は、シャーロットをちらりと見やってそう付け加えた。
「……っ。お前、誰なんだよ!?」
「俺か?俺はミカエル・エインズワースだ」
ぐっと詰まったテッドが問うと、青年…ミカエル・エインズワースは薄い笑みを浮かべたままで答えた。
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