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赤いペディキュアの秘密を教えてくれたのは、放課後二人で過ごした時だ。沙良と放課後を一緒に過ごしたのは偶然で、二人で示し合わせて一緒に過ごしたとかじゃない。
私は、先生に呼ばれて帰りが遅くなり、沙良は誰もいない放課後の教室で、本を読んでいた。用事を済ませて教室に戻ると、沙良が一番前の窓際の席に、座わっていたのだ。
10月の陰りを深めた空気が、彼女の周りを取り囲み、私は思わず息を呑んだ。そこにいる彼女が別人のように映った。本に視線を落としている彼女の横顔は、もう少女ではなく、大人の女性のようで、制服や教室が酷く不釣り合いのように見えた。それらは、沙良の窮屈なものの様に感じ、沙良がそれらを追い越して先に進んでいるようだと、何故かそう思ったんだ。
沙良の声を掛ける勇気はなかった。もともとそんなに親しい訳ではなかったし、自分の心のままに動くことの出来る沙良と、大人しく目立たないように自分を殺し息を潜めてクラスに存在する私とでは違い過ぎる。
「まだ残っていた人がいたのね。」
最初に話し掛けたのは、沙良の方からだ。
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