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廊下を二人で歩いている間も、いつも通りの林くんとは対照的に、上の空な返事しか出来ない俺。
いつもより長く感じた廊下を抜け、やっと保健室に着いたわけだけど、肝心の保健の先生はいないし、他に保健室を利用する人もいない。
つまり、俺は今林くんと保健室で2人きりだ。いわゆる、フラグというやつが立ってしまった。
あ、いや落ち着け。自分にそういう趣味があるからって、林くんはノンケなんだからな。期待しちゃダメだ。
っていやいやそもそも期待って何言ってんだ俺は。林くんを俺の趣味に巻き込むつもりかよ。
「あれ、もしかして、熱があるんじゃない?」
一人で悶々としていると林くんが右手を俺の額にゆっくりとかざしてきた。
……あれ、俺ほとんど仮病なのに、熱なんかあるんだろうか。いつの間に、出ちゃったんだろう。知恵熱、かなあ。
「うーん、やっぱりちょっと熱いね」
林くんは暫く俺の額に手をあてたまま、眉を下げながらそう言った。
間近で見る林くんはやっぱり綺麗な顔をしていて。同じ男の子だと分かっていても、なんだか無駄にドキドキしてしまう。
それにしてもなんだろう、この少女マンガのようなやりとりは。こういうとき、漫画のヒロインとかは、どうしてたんだっけ。あれ、つか俺ヒロインかよ?
じゃなくて、えっと、全然、思い出せない。ど、どうすればいいんだっけ。
親友相手に何故か混乱して何も言えない俺に対して、林くんはニコニコしたままで、余裕な感じだ。
なんか、今日の林くん、いつもと違う……。
……いつもと違うのは、俺もかもしれないけど。
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