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「うーん、ちょっと待ってて。体温計、取ってくるね」
しかし、熱とは不思議なもんで、あると言われたとたんに急にあるように思えてくるようだ。
林くんに少し熱があると言われてから、なんだか本当に体がダルくなってきた。
「体温計、体温計っと。……あ、あった! はーい、じゃあボタン開けるね」
「ひ、一人で出来るよ林くん」
流石にそこまでさせるのは申し訳ないし、そこまでしんどいわけじゃないから大丈夫だよ林くん!!
「そう? ……はい、じゃあこれ挟んで」
とはいえど、林くんに見られながらボタンを開けるのがなんだか恥ずかしくて緊張してしまった俺は、上手く手が動かなくて、結局林くんにボタンを開けるのを手伝わせてしまった。
首筋に触れた林くんの手は冷たくて、少しこしょばかった。
体温をはかっている間も林くんの視線を感じて、俺はどことなくもじもじしながら壁を見つめていた。
しばらく経って、ピピッと電子音が鳴った。林くんは体温計をとるため、俺の服の中に手を突っ込んだ。びっくりして思わず変な声をあげそうになって口元を押さえていると、
「あれ、7度8分だ、結構高いね。……って、どしたの? 吐きそう?」
と言われてしまった。林くんにいらぬ心配をかけてしまってることが申し訳ない。実際は全然そんな理由じゃないのに。
「う、ううん、大丈夫だよ。ちょっと、びっくりしただけ。ありがとう林くん」
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