第1章

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場合よっては死に至ることもあるのだが、 転生とちがって、お主は1回目の死を清算していない。 つまりは、迂闊に死ぬとその分の業が増すのじゃ。」 『どういう事でしょう?』 「猫の考え、休むに似たりじゃな。」 『悪かったですね……。』 「拗ねるな。つまりだ。極楽へ往生するには功徳六文。 これは閻魔大王様の仰りに間違いは無い。」 『はい。ですから頑張ってます。』 「ところがじゃ。逆もまた真なり。お主は猫ゆえ 鏡という道具に余り好感を持っていないな。」 『ええ。再生前は敵の猫かと思って何度か ぶつかりましたし。あれ、部屋の大きさがいまいち。』 「そうではない。鏡とはどういう道具じゃ?」 『えっと、自分とか映したいモノを逆に映す道具ですか? たまにメメ様が、草食系男子と知り合うと、鏡を使って 変装とかしていますね。』 「それは変装ではない。だが世の女性を敵に回して 何一つ功徳は得られないので、それは他言するな。」 『はい。で、鏡が何か?』 「で、鏡とは何が逆に映るのか?」 『左右じゃないんですか?上下ではないですし ネガポジでもあり得ませんから。』 「違う。それは誰かの体験に依るのじゃ。」 『え?』 「鏡とは古来、水を模したものであり、陽の象徴である。 お主は鏡を見て、右の前足で鏡を触れば、鏡の中のお主も 右(側)の前足で呼応する。お主が他の猫と仮定すれば 鏡の猫は左の前足となるだろう。だが違う。やはり お主である限りは、鏡の中のライトも、右足で触っている。」 『?どういう意味です?』 「鏡で逆なのは、左右ではない。前後じゃ。」 『ああ、だから背中が見えないんだ。なるほど。』 「では、さらばじゃ。」 『え?!どういう事です?』 「お主は再び再生される。だが、功徳をサボるほど 地獄へ近づく。六文銭の裏側。お主の持つ絵図紙を見よ。 今回の失態、一文の半分に等しい。何故かと問うな。 目覚めれば判る。いいか、何もせず功徳も積まずに、 アンニュイに日々を過ごせば、裏六文が貯まる。 その時は、閻魔様を通らず地獄逝きじゃ。精進せよ。 お主は再生の身である。一時停止しようとも その再生から逃げられぬ。不死身の生き物はお主を 含めていない事を、努々疑う事ないように。喝!」  眼が醒めた。体中が包帯だらけ。動くと傷口が 開く。血の匂いがする。痛い。すげえ痛い。 半端ない。一度死んで再生してから忘れてた。
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