消された煙草

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「僕と一緒にいても幸せになれないと思うんだ。別れてくれないか」 貴方は冷たく言い放ったけれど、どうしてそう思えたのか、本当のワケが知りたかった。 私からその疑問を投げかける前に吸っていた煙草を手早く灰皿に押し付けて、逃げるみたいに出て行ってしまった。 突然告げられた別れの言葉になす術もなく、立ち尽くすしかない。 灰皿の中の吸殻が、まるで自分のようだった。なんて惨めな姿なんだろう……。 そんな憐れな吸殻を拾い上げて、手のひらに包み込んだ。ほのかに温かさを感じる。 ――あの人の想いの熱……。 出来る事なら燻っていてほしかった。その残り火で、私の心に烙印を押してほしかった。 そんな消えない烙印を胸に抱いて、貴方を永遠に想い続たい。 貴方を想う気持ちは、きっと迷惑でしょう。だけど吹っ切れるまでは、どうか許してください。
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