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「父さんが…大罪人?」
クリアスは愕然とした。
「嘘だろ…嘘言うなよ!父さんがそんな人間なわけがない!父さんは…どこで生まれたかもわからない俺を、20年もたった独りで育ててくれたんだ…剣の稽古は厳しかったけど……遠い街まで、何時間もかけて買い出しまで行って…俺を…そんな父さんが!」
「…ふふっ、イアラン、よくここまで手なづけたもんだな。どうせ貴様のねじまがった正義でも押しつけたんだろうが、はっきりいって怒りたいのはこちらの方だ。国家に対する裏切り…あまつは逃亡…まあてっきりの垂れ死んだものだと思っていたが、レイクサイドの街でお前の噂を聞いて来てみれば、まさかこんな辺境に住んでいたとは」
いきなり現れた謎の兵隊…そこから聞かされた、父親の衝撃の過去…ついさっき、実の父親ではないと聞かされたことなど、霞んで消えてしまいそうなくらいの現実の連鎖に、クリアスは泣きそうな気持ちを、それとは別の怒りの感情で抑えていた。
まだクリアスは、父親がそんなことをするわけがないと、心のどこかで信じていた。
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