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イアランは、クリアスだけに聞こえるようなか細い声でささやいた。
「クリアス…父さんがこいつらを引き付ける…その間にお前は逃げろ」
「え?」
「グランドロスという国にいるエルドという男を訪ねろ」
「ちょっと何言ってんだよ父さん。こんな奴ら、俺と父さんが頑張れば」
「ファルコンは剣の達人だ。後ろの親衛隊も5人もいる。はっきり言ってお前は歯が立たない」
「…な…嫌に決まってんだろ…大体グランドロスってどこだよ…エルドって誰だよ…俺は父さん以外に頼れる人間なんていないんだよ。逃げてどうしろってんだよ」
「いいから言う通りにするんだ。選択肢はない」
父親が四の五の言わず逃げろ、と言ってくる。もはや尋常ではない現状であることは理解した…が、それでもクリアスは承諾できなかった。
「大方、逃げる算段でも立てていたのだろうが」
そんなイアランの策略を見抜いたファルコン。先手を打つ。
「お前らはあいつを捉えろ。私はイアランを捕まえる」
後ろにいる親衛隊に作戦を伝える。
「まあ大丈夫だとは思うが、くれぐれも油断するなよ。まだ若いとはいえ、イアランの指導を受けていた者。今はどうか知らんが、イアランは昔は私さえもしのぐ剣技の持ち主だったからな」
「わかりました!」
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