4918人が本棚に入れています
本棚に追加
……でも、まあ、それがいいかも。
結城の部屋に送り届けようものなら、あの兄貴が「寝てる妹になにさらしてくれてんだ!」と人の話を聞かずに怒り狂うだろうし、俺の部屋に連れて行ったりした日には……。
……うん。
上原の部屋が無難だ。
「じゃあ頼むわ」
「はーい」
上原はニッコリ笑って、その手を俺の前に差し出した。
「……なに」
「え、いや。りおちゃん運ぶからちょうだい」
ちょうだいって。
結城を物みたいに。
「いい。俺が運ぶ」
上原の手を押し退けて、結城を抱きかかえて立ち上がった。
「……ふふふ」
上原がまた何かを含んだ目をしながら笑ったけれど、無視してリビングを出た。
「ちょっと、待ってよ」
パタパタ小走りで上原が後を追ってきた。
そのまま俺を追い越して、自分の部屋の鍵を開ける。
ドアを開いて「どうぞ」という仕草をしたので中に入る。
「私のベッドでもいいんだけど、大ちゃんが嫌がるだろうから布団敷くわね。待ってて」
余計なことを言いながら上原はクローゼットの中から布団一式を取りだし、手早くベッドの横にそれを敷いた。
その上にそっと結城を寝かせる。
「うーん……」
小さく呻いて眉間にシワを寄せた後、また穏やかな顔に戻って静かな寝息を立てる結城。
ちょっと起きて欲しかったけど、仕方ない。
今日のところはひとまず退散するか。
最初のコメントを投稿しよう!