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***
「……ん……」
ごろんと寝返りを打ったところで目が覚めた。
先生に抱き締められる夢を見ていた。
もっと見ていたかったなぁ。
寝起きのボーッとした頭でそんなことを考えていたのだけど……。
──ん?
あれ……?
なんかいつもより天井が高い気が……。
……天井っていうか、部屋がこれ、あたしの部屋じゃな……。
「あ、りおちゃん起きたあ?」
明るい声と共に突然、あたしの視界いっぱいを埋めつくしたのは──
「……っ、沙羅さん!?」
バチッと目が覚めた。
あたしは勢いよく起き上がって辺りを見渡す。
あたしのごちゃごちゃした部屋とは違ってスッキリシンプルに揃えられた家具が並ぶ、ここは間違いなく沙羅さんの部屋だ。
でもなんで?
あたしは焦って昨夜の記憶の糸をたぐった。
えーと、昨日は夜、先生のことが気になって眠れなくて。
そしたら先生から今から帰るよってメールがきて。
だから少しでも会いたくなって、ベッドから抜け出てリビングへ下りて──
──下りて……そこから?
「寝ちゃってたのよお、りおちゃん。リビングで」
あたしの考えが読めているかの如く絶妙なタイミングで、沙羅さんが答えをくれた。
寝ちゃってた?
あたし、先生が来る前に寝ちゃってたの?
「私が帰宅したら、ちょうど大ちゃんが寝込みを襲おうとしてたから止めておいたの。それで、りおちゃん全然起きないから私の部屋に連れてきたってわけ」
スラスラと説明が続く。
なるほどー。
あたしってば翔兄と一緒で一度寝るとなかなか起きないから。
それは迷惑かけたな……。
沙羅さんにも先生にも……って、え!?
危うくスルーするところだった!
沙羅さん、今何て言った!?
先生が……寝込み……!?
「うふふ。大ちゃんってば、りおちゃんの寝顔があんまり可愛かったのねー」
「さ、さ、沙羅さん、その話、もっと詳しく……」
ハアハアと変態のように息を乱しながら沙羅さんに詰め寄った、その時。
ドンドンドンドン!!
ものすごい勢いで玄関のドアが叩かれた。
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