4918人が本棚に入れています
本棚に追加
これにはさすがにタニマ先生も驚いたのか、黙って目を丸くしている。
それを確認して、あたしは深く息を吸い込んだ。
「あたしにもちゃんと分かるように説明してください。2人だけで話を進めないで」
先程よりも声のトーンをおさえて、努めて冷静に振る舞う。
どうもタニマ先生はあたしをナメてる感じがする。
年齢的なものじゃなく、女として。
さっきから先生を見る目には色気が漂っているし、事態がよく飲み込めないあたしの目から見ても、先生に好意があるのは明らか。
冗談じゃないよ。
確かにあたしはタニマ先生よりもずっと年下だし、胸だって小さいし、色気なんて皆無だけど。
それでも先生の彼女はあたしなの。
あたしの存在を無視して先生に近づこうとするなんて、ナメんじゃないっての。
ガルルと牙でも剥いてやろうかしら。
そう思った矢先のことだった。
最悪のタイミングで、予鈴が鳴った。
──ああ、もう!
ホームルームなんてサボって話したいところだけど、そうもいかない。
「……とりあえず、この話はまた後で。結城、教室戻って。……谷田先生も、もう出てください」
「はあい」
先生の指示に、間延びした声でタニマ先生が頷く。
そして入り口の扉を開け、廊下に出るとこちらへ振り返ってあたしと目を合わせた。
「また後でゆっくり話しましょう。……えーと、結城さん?」
あたしの名前を思い出すように空を仰いでから、首を傾げて微笑んでくる。
あたしは無言で頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!