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これにはさすがにタニマ先生も驚いたのか、黙って目を丸くしている。 それを確認して、あたしは深く息を吸い込んだ。 「あたしにもちゃんと分かるように説明してください。2人だけで話を進めないで」 先程よりも声のトーンをおさえて、努めて冷静に振る舞う。 どうもタニマ先生はあたしをナメてる感じがする。 年齢的なものじゃなく、女として。 さっきから先生を見る目には色気が漂っているし、事態がよく飲み込めないあたしの目から見ても、先生に好意があるのは明らか。 冗談じゃないよ。 確かにあたしはタニマ先生よりもずっと年下だし、胸だって小さいし、色気なんて皆無だけど。 それでも先生の彼女はあたしなの。 あたしの存在を無視して先生に近づこうとするなんて、ナメんじゃないっての。 ガルルと牙でも剥いてやろうかしら。 そう思った矢先のことだった。 最悪のタイミングで、予鈴が鳴った。 ──ああ、もう! ホームルームなんてサボって話したいところだけど、そうもいかない。 「……とりあえず、この話はまた後で。結城、教室戻って。……谷田先生も、もう出てください」 「はあい」 先生の指示に、間延びした声でタニマ先生が頷く。 そして入り口の扉を開け、廊下に出るとこちらへ振り返ってあたしと目を合わせた。 「また後でゆっくり話しましょう。……えーと、結城さん?」 あたしの名前を思い出すように空を仰いでから、首を傾げて微笑んでくる。 あたしは無言で頷いた。
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