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「お待たせ」 18時50分。 先生が姿を現した。 大家のおばあちゃんが用意してくれていた夕飯も喉を通らず、手持ち無沙汰に鳴らない携帯電話をテーブルの上に置いてそれを見つめていたあたし。 先生が帰ってきたことに全く気づいていなかったので、ビクッと肩をすくませてしまった。 「あ。お、おかえりなさい!」 ガタタッと音を立ててイスから立ち上がる。 「ただいま」 そんなあたしの様子にフッと笑って、先生はあたしの向かいのイスに………… 座るかと思ったら、そこをスルーしてあたしの隣まで歩いてくる先生。 目で追っていると、先生はそのままあたしの隣のイスに手をかけた。 「……」 「座ったら」 「はっ!」 イエッサー、とでも続きそうな変な返事をして、あたしもイスに腰をおろす。 お昼のメールといい、隣に座ることといい、今日の先生はいつもと違う。 原因はタニマ先生だよね。 一体、あの人となにが……って、ん? あれ? そういえば、あの人は……? 「先生……。タニマ先生は来ないんですか?」 いなきゃいないでいいんだけど。 てっきり3人で話すものだと思っていたから。 あたしの質問に、先生はどことなく疲れた表情で頷いた。 「一応声はかけたんだけど。何も話すことはないから来ない、だと」 「……はあ」 ……へーーー。 あたしみたいなお子ちゃまと話すことは何にもないってこと? ふーーーん。 ほーーー。 あっそう。
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