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「は」の字に口を開けたまま、あたしはしばらく固まってしまった。
ね、寝たい?
……それって、あの、グーグーと寝る方のアレじゃないんだよね?
違う意味の方のアレだよね?
それ、あれ、とあたしの頭の中はまるで糸がぐちゃぐちゃに絡まったような状態になった。
「……だから言いたくなかったんだ」
あたしの様子を横目で見て、ハア……と息を吐く先生。
ハッと現実に引き戻され、あたしは気を取り直すためにブンブンと頭を振った。
「ど、どういうことですか!?ね、ねねね寝たいだけって?」
寝たい、の部分は声のトーンを抑えて先生に詰め寄る。
「どういうことって、そういうことなんだろ」
先生はげんなりしている。
いやいやいや。
そういうことって、どういうこと?
「だって、好きってわけじゃないって言ったじゃないですか。ねね、寝たいってことは、好きってことでしょう?」
「だから、そうじゃないらしい」
「そうじゃないって?」
「だから、好きじゃないって」
「……???どういうことですかあ!?」
「知らねーわっ!」
あたしのしつこい問いかけに、ついに先生がキレた。
「つまりあの女は、俺が好きなんじゃなくて、セックスが好きってことなんだろ」
「セッ!!!!」
今まではあたしに申し訳ない気持ちがあったからだろう、それはそれは優しかった先生が、途端にいつもの調子に戻る。
「そういうヤツはいるよ、実際。お前、さっき俺に『私はもう先生が思ってるほど子どもじゃありません』って言ったよな。だったら納得しろ」
な、な、な。
先生の豹変っぷりに、あたしは口をパクパク開閉することしかできない。
先生、これ、絶対面倒臭くなった。
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