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「先輩、こっちこっち」
「おー、桐ちゃん、久しぶりー」
「いいから早くっ。もう始まっちゃいますよ」
「まじか。やべやべ」
「もう。久しぶりに結城先輩に会えるっていうのに、なに遅刻してんですか」
「だーって、会えるっつったって俺が一方的に見てるだけじゃん。それってなんか、セツナイじゃない」
「……やっぱり、まだ、結城先輩のこと好きなんですね」
「えー?そういうんじゃないけど……って、なになに桐ちゃん、拗ねちゃった?」
「……は?な、なに言って……拗ねてませんし」
「ほんとに~?」
「ほんとですっ。ていうか、始まりますよ」
「おお~。……つか、毎年見てるけどやっぱすげえな、『フィエスタ』。なんつーか、圧倒される」
「当たり前です。聖華の学生は、この日の為に一年間頑張ってるんですから」
「熱いね~」
「……その中でも、結城先輩は華がありますね」
「ん?」
「出てきた瞬間、人目を引くなにかがあります。オーラっていうか……。ピアノの技術はもちろんありますけど、それだけじゃないっていうか……」
「……」
「……なんですか。なに笑ってんですか」
「いや?一年前は、りおに対して敵対 心バリバリむき出しだったのになーと思って」
「昔の話ですっ。それに、それは結城先輩のピアノの才能についてのことじゃなかったし……」
「はいはい。分かってるって。大人になりましたね」
「……子ども扱いしないでください」
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