はじめに。

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山盛りの吸い殻と、時折、氷の崩れるアイスコー ヒーが今日も私に時を知らせた。 気忙しい喧騒の中で生きる現代人は、必ず何かを 擦り減らしながら生きている。 それは夢だったり、良心だったり、人だったり、 時間や金だったり。 そうやって生きて行くしかないこの世の中で、私 は常に物語を生む喜びを知り、それを日々、マス ターベーションの様に続ける事が出来ている。 ある種、私は幸せな生き方をしているのかもしれ ない。 吸収する物語は日々増え続け、排出する物語への 糧となる。 人を書く事。 街を書く事。 色彩を書く事。 時間を書く事。 それらは滲むインクの様な化学反応を起こし、一 つの物語となる。 映画の様な小説を書きたい。 私は常日頃からそう言っている。 映画には人が居て、色彩が有って、音楽が流れる。 黄ばんだ背表紙の文庫本をめくり、人や色彩、そ して音楽を感じる事が出来れば、その物語は映画 と同じなのである。 何年か経ち、私の書いた物語をあなたが誰かに食 後のコーヒーを飲みながら語り始める。 彼はあなたに言う。 「それって何、映画、小説。」 あなたはその彼の質問に小首を傾げる。 「映画だったかな…。小説だったかな…。」 そのあなたの記憶の奥底に残っている、私の書い た物語と共に、人や色彩や音楽が宿っていれば、 私の勝ちである。 読む物語では無く、観る物語を書く。 それが星賀ワールド。 ここではその星賀ワールドの裏側を語ってみたい と思っている。 2014年10月吉日
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