恋愛嗅覚

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「…え?」 「どうせ、今日一日空いてるんだろ?」 「…はあ…」 …お見合いなワケですから。 「俺んちのめんどくせーことに巻き込んだお詫び。これからちょっと遠出するけど…あ、それともやっぱこういうところで飯の方がいい?」 彼はホテルの表に出て、上を見上げて言った。 …これから…遠出? 「いえ…こっちで」 私はホテルとは反対側、彼の進行方向を指さした。 「ん、オッケー。車、ちょっと離れたところに停めてんだ。そこから散歩しながら来たから」 彼は歩き出した。 「今って、散歩にはちょうどいいよね」 彼は歩きながらネクタイを外して、第一ボタンを外した。 今日は快晴。 お見合い日和。 秋の日差しが街路樹である色付き始めた銀杏(イチョウ)の葉をすり抜けて私たちに降り注いだ。 歩調を私に合わせてくれる彼の横で私は思った。 彼は…本当に変わり者かもしれない… でも ちょっと… 面白い展開かもしれない。
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