恋愛嗅覚

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「妻は結婚もしていないからそんな考えが浮かぶんだって言ってね…」 常務が私を見る。 …な、何? 「で、妻が息子に条件を出したんだ。何か行動を起こす前に、見合いをすること」 「…お見合い…ですか…」 「…そうなんだ。だが、息子には結婚の意志なんてまるでない。だいたい…こんな転職を言い出すくらいだから…もともと変わり者なんだよ」 「…はあ…」 …そんな変わり者なら、お見合い相手に同情する。 「だけど…」 常務が上目遣いに私を見た。 こんな視線を受けるのはもちろん初めて。 「結果のわかっているお見合いを、よそ様にさせるわけにはいかないだろう…?」 疑問形なので答えなければ。 「…そうですね…。失礼になりますよね」 「…そうなんだ。でも…きっと妻は一度見合いをすれば気が済むんだ…」 …常務… …その目… 常務なのに、 会長と歳はさほど変わらないのに …子犬みたいな…目。 …まさかとは思うけど… 「…フリだけで…いいんだ」
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