恋愛嗅覚

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「…常…務…?」 常務は胸の前で手を合わせた。 「こんなこと、頼めるのは君以外にいないんだよ…。本当に申し訳ないんだが………何とか…お願い出来ないかな?」 そして、私に頭を下げる。 「ちょ、ちょっと、常務、やめてください!!そんな、ちょっと、お願いですから…」 常務が伏せていた視線を戻して私を見る。 だから…その目、 …やめて……。 「…フリ…でいいんですよね?」 常務の目が輝く。 「もちろんだ」 「でも…フリだけなんて…奥様、納得されますかね…」 「なあに、条件を出したのは家内だ。一回すれば文句は言わせないよ」 「…常務って…息子さん想いなんですね…」 「…家の中では男は肩身が狭いからね。私くらい息子の味方をしてやらないと」 「…そうですか…」 話している内に、私もフリだけなら…と思えてくる。
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