桃色レンズ

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仕事は真面目にこなす。 意欲も有れば小さな機転もわりかしきく。 上司の指示にもそつなく動け、慣れれば会社って結構居心地いいじゃん、って。 『結城(ユウキ)さん、中々覚えが早いわね。教え甲斐があるわ』 『ぁ、ありがとうございますっ』 と、歓んでいたのは今朝までの私。 気分良く午前の仕事を終わらせ、昼食代わりのカップスープを作りに給湯室へと向かったところ。 『課長って怖ぇよな、俺、欠伸しただけで弛んでるって睨まれたんだけど』 『あ~、言いそう。あの人、俺らみたいなペーペーにはキツいって有名らしいよ。四十間近で独身、社内の男ではもう見込みが無いから社外で頑張ってんだって。営業先の上役にはスリット深めのスカートで愛想振りまく、ってこの間俺んとこのリーダーが笑ってた』 『マジで? あイタタ~。婚期逃した女の努力って見るに堪えないな』 ……。 ふわりと漂う煙草の香りと会話の内容から。 『そりゃ女で出世してりゃ、収入低い若い男には見向きもしねーわな。ま、見られても困るけど』 同期か、それに近い、男性社員。
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