桃色レンズ

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くるりとUターンした私。 楽しみにしていたカップスープを諦め、会社の直ぐ前にあるコンビニへと行き先を変えるべく、エレベーターへと足を進めた。 仕事は楽しい。 遣り甲斐もある。 だけど――。 チン、と高めの音が響き、エレベーターを降りて足早に歩く私の頭には。 “社内ではもう見込みが無い” “深めのスリット” “婚期逃した女の努力” ……。 『私の、末路……?』 コンビニのサンドイッチの棚の前で一点を見つめる私の上に。 『あんた、買うの買わねーの、どっち』 『えっ』 落ちてきた無愛想な声。 見ると。 『買わねんならどいて、それとも迷ってんの? なら左のにしてよ、俺それダメなんだわ』 『へ、あ?』 大きめのサングラスをかけた男が、私の頭上に手を伸ばした。 『あ、あ~~っ!』 我に返った私の非難の声を通り越し、サングラスのおかげかちょっとイケメン風な長身が右の品を掴んでいく。 『それ、昔のロングヒット。早い者勝ちだし? あんた今日はそっちで我慢しな』 振り返ったサングラスの奥の瞳が意地悪く笑った気がした。 見えないけど……。
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