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「あす君。」
「・・・うん。」
杏子を葬った墓標が、どんどんと遠ざかる。
それでも、明日馬は。
いつまでも、それを目で追っていた。
四人は、教会前に停めてあったジープで、旅を再開していた。
運転席には伊吹、助手席には真理阿。
そして、後部座席に未来と、明日馬。
「あす君。」
「大丈夫。」
完全に墓標が視界から消えて、明日馬は漸く、前に向き直った。
「悲しければ、泣く。泣き方を、いぶきから教わった。泣きたい時は、泣くから。大丈夫。」
「あす君・・・」
自分より、一回り程大きい体躯の明日馬を、未来は。
包み込むような仕種で、抱き締めた。
「いつでも、泣いて。私が、いるから。」
「・・・」
明日馬はこくり、と頷き。
未来の、寄せられた頬を、撫でた。
「ねぇ。伊吹。」
そんな二人の様子を伺っていた真理阿が、耳打ちで伊吹に話し掛ける。
「あの二人、DNA的には、きょうだい、なんだよ、ね・・・」
「いいじゃねぇか。」
対して。
伊吹の口許には、笑みが浮かんでいる。
「あいつらが、決める事さ。」
「でも・・・」
「あいつらの望む未来に、何かの障害があった時、力を貸してやるだけさ。」
「伊吹・・・」
「それだけだ。」
「・・・そうだね!」
真理阿は、妙に嬉し気に、伊吹の肩に、己の頭を乗せた。
ジープは一路、西へと向かう。
その先に何があるのかは、解らない。
ただ。
切り開いて行く未来が。
明け行く明日が。
二人にとって、納得の行く物であるように。
伊吹は、それを祈っていた。
神を、信じぬままに。
[完]
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