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「これ、は・・・!」
三人が辿り着いた場所には、ジープが停められていた。
少々古び、錆付いてはいる物の、それは経年による物と見受けられる。
充分、使用に耐えそうだ。
が、伊吹と真理阿を更に唖然とさせた物は、その背景にある建物だった。
「お城ー!」
未来が目を輝かせて歓声を挙げるが、それは城では無い。
三角の屋根の上、十字のオブジェが掲げられ、窓には配色豊かなステンドグラス。
「教会・・・?」
真理阿が漏らした通り、どう見てもキリスト教系の宗教施設だ。
「こんな場所に?」
「・・・でも、中国にだってクリスチャンはいたんじゃない?」
疑問を呈する伊吹に、真理阿は少し考えて応える。
「こんな、人里離れた場所に、か?」
伊吹は更に重ねて問う。
確かに、”人間”の住まぬ場所であるなら、何教の物であっても、宗教施設は意味を為さない。
その場が該当する宗教の聖地である、その場に何等かの伝説が残る土着の信仰対象が大きな宗教勢力に併合された、等も考えられなくは無いが、寄りにも寄って、中国の山中にキリスト教系の教会。
これは、不自然だろう。
「ねー。何かいるよー。」
「え!?」
「!」
未来の声に二人が振り返った。
その時。
「わ。」
教会入口から未来に向かい、細長い影が飛来した。
が、未来は難無くそれをぱしっ、と音を立てて掴んだ。
「これ、なんだろー。」
そして、それを縦にしたり横にしたり、まじまじと観察する。
「何か、かっくいー!」
「見せて見ろ。未来。」
無邪気に歓声を挙げる未来に、伊吹が歩み寄る。
が。
「!」
伊吹の眼が鋭く輝き
「二人共、伏せろ!」
次の瞬間、絶叫とも言える声を発した。
その、直後。
「きゃっ!?」
真理阿は伊吹の言葉通り、と言うより、反射的な回避行動として、頭を抱えて腹這いに伏した。
「わ!いっぱーい!」
未来は楽し気に嬌声を挙げる。
”未来が掴んだ物と同じ物体”が、無数に飛来したのだ。
「未来!」
「未来っ!」
伊吹は身をかわしながら。
真理阿は伏したまま。
娘を案じる声を発した。
が。
「あはははは!面白ーい!」
若干、トリッキーな動作で、未来は悉くそれをかわして行く。
「・・・」
「・・・」
伊吹と真理阿は、自分達の心配が取り越し苦労と知り、苦笑を見合わせた。
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