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「・・・何だったの?今の・・・」
暫く後。
漸く物体の雨が止み、真理阿が恐る恐る身を起こしながら、伊吹に問い掛けた。
「分かった事は、二つ、だな。」
伊吹は、回避の途中に掴んだ”その物体”を眺めながら、応えた。
「先ず、一つ。生き残りの人間が見付かった、って事。」
”物体”は、明らかな人工物だった。
しかも。
”回避行動”が必要な程、ほぼ正確に、3人に向けて飛んで来た。
自然の作用であるとは考え難い。
「もう一つは・・・」
伊吹の鋭い視線が、教会の入り口に注がれる。
「あまり歓迎されて無い、って事だ。」
「でも、何で?」
「さあ、な。」
かつて”バグ”であった伊吹にとって、突然、理不尽に攻撃を受ける事は通常の事だ。
が。
物体は、伊吹の娘である未来は兎も角、真理阿の身も狙っていた。
”バグ”である事が理由では無いだろう。
「それに・・・」
「こ、これ・・・!」
伊吹の手の中の物体を覗き込み、真理阿は言葉を失った。
その形状には、見覚えがある。
と、言うより。
忘れようにも、忘れられない。
かつて、真理阿は。
それと同じ物で”命を落としかけた”のだから。
「ねぇねぇ。これって、なぁに?」
未来は自分の掴んだ、同様の物体を弄びつつ、どちらにとも無く問う。
「・・・棒手裏剣、だ。」
応えたのは、伊吹だった。
真理阿は未だ、呆然とそれを見詰めている。
「手裏剣!?」
何故か未来の顔が、ぱあ、と輝く。
「ニンジャ!?ニンジャいるの!?」
「忍者かどうかは分からないけど・・・」
突然、勢い込む未来に、若干戸惑い、若干呆れつつ、伊吹が言葉を濁す。
「すごーい!やっぱりお城には、ニンジャがいるんだね!」
「えー・・・と・・・」
色々と間違え過ぎていて、どこから訂正していいか解らない。
「おーい!ニンジャさーん!」
「あ!おいこら!」
未来は楽し気に、歩調も声も弾ませつつ、教会の入り口へと向かう。
「み、未来!危ないよ!」
我に返った真理阿も、それを制止しようと声を挙げたが。
「ニンジャさーん!私、未来!出て来て友達になろーよー!」
未来には、全く効力を持たない。
とうとう、未来は教会内部へと足を踏み入れた。
と、同時に。
「うぉぉぉぉ!」
雄叫びを挙げる影が、未来に迫り来た。
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