第二章 解仰

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「がぁっ!」 一閃。 影の人物は、何等かの細長い物体・・・恐らく棒手裏剣を、横薙ぎに薙いだ。 「にゃっ!」 未来は瞬時に後退し、事無きを得た。 が。 「うわあぁぁぁ!」 人物は、気合いとも、威嚇とも、はたまた単なる咆哮ともつかぬ叫びを挙げつつ、未来を追撃する。 「未来ぅっ!」 真理阿が足元の石礫を拾い、身を乗り出して構えた。 ところが。 「まあ、待て。」 伊吹の広げた腕に、それは中断させられた。 「い、伊吹!何で!?未来が!未来が危ない!」 真理阿は混乱しつつ、喰って掛かる。 しかし。 「危ないように見えるか?」 伊吹は微かな笑みと共に、問い掛けた。 一方、未来は。 「へー!投げるだけじゃなくて、こんな使い方もするんだぁー!」 実に楽し気に。 一見、ゆったりとした、舞踊の様な動きで。 かなりの高速である棒手裏剣を、右に、左に、後方に、悉くかわしている。 「み・・・未来・・・」 真理阿は目を真ん丸に見開いて 「凄い・・・いつの間に・・・」 感嘆の呟きを漏らした。 真理阿自身、戦闘経験は乏しい物の、その速さと淀み無い連携に、相手がかなりの使い手である事を理解していた。 だが、未来は、その攻撃を全く苦にしていない。 「俺の目から見りゃ、まだまだ無駄な動きが多いが・・・」 伊吹が、輝き宿す眼差しのまま、語る。 「俺が未来の歳にあれだけの動きが出来たか、っつーと・・・ちょっと自信ねーな。」 「ぐ・・・はっ・・・!」 なかなか決まらない事による焦り、もあったのだろう。 矢鱈滅法に攻撃を繰り出し続けた人物の声に、喘鳴が混ざり始める。 「どーしたの?ニンジャさん。さっきより遅いよー?」 未来は息一つ乱していない。 「ぎゃああぁぁ!」 それを挑発と受け取ったのだろうか。 破れかぶれと言った態で、人物は得物を突き出した。 そこへ。 「隙ありー。」 がら空きの胸部中央、未来の掌底が炸裂した。 「・・・!」 人物は声も無く、動きをぴたりと止め。 ゆっくりと、膝から崩れ落ちて行った。 「ニンジャ対未来、未来の勝ちー!」 未来は、ぴょん、と跳ねるような片足立ちで、勝ち名乗りを挙げた。 「まあ、あの歳の頃、俺はあそこまで能天気でも無かったけど、な。」 伊吹は眉尻を下げて、苦笑した。
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