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「でも・・・やだな。」
ぽつりと、真理阿が呟いた。
「何が。」
「生き残りが女の人しかいなくて・・・伊吹が取られちゃったりしたら・・・」
「馬鹿。」
「だ、だって!」
真理阿は居住まいを正し、伊吹に真っ直ぐな眼差しを向けた。
「未来以来、私・・・全然子供、出来ないし・・・最終手段にしたって、未来に兄弟が出来なきゃ、しょうがないし・・・」
「俺もお前も、まだ若いし。これからだろうよ。それに・・・」
伊吹はふ、と苦笑した。
「逆だって、有り得るんだよな。」
「え?」
「生き残りが、男しかいなくて・・・って状況。」
「そ、そんなのっ!」
真理阿は
「わ、私、伊吹以外の人と、なんて!それだって嫌だよ!そんな事、絶対に無いもん!なんでそんな意地悪言うの!?」
自分が言い出した事であるにも関わらず、激しく憤慨し始めた。
「悪かった、悪かったよ。」
「私には・・・伊吹だけだもん・・・」
「・・・って・・・だ。」
「え?何?」
「・・・俺だって・・・お前だけ、だ・・・」
「聞こえないよ。もっとおっきな声で!」
「・・・本当は聞こえてんだろ。」
「え?何の事ぉ?」
その応えとは裏腹に。
先程迄の斜めになっていた機嫌は何処へやら。
ご満悦な顔で身を寄せ、腕まで絡めて来る真理阿の態度から察するに、やはり、どうやら伊吹の推量が正しいらしい。
そして。
「・・・」
伏せ気味だった目を閉じて。
差し出すように、伊吹に赤らんだ顔を近付ける。
「・・・」
伊吹はそれに応じて、真理阿の唇に、己のそれを・・・
「たっだいまぁ!」
寄せかけた所で、山鳥らしき物を手に、未来が茂みから踊り出た。
真理阿は意味不明な、無意味な手振りをおまけに付けて、さ、と伊吹から身を離す。
伊吹は苦笑しつつ
「お帰り。」
それでも頬の火照りは、すぐには消えない。
「あっれぇ~?もしかして、お邪魔しちゃいましたぁ~?」
「なっ!このぉ、おませ娘ぇっ!」
照れ隠しなのだろう。
真理阿はいきなり、未来にヘッドロックを仕掛けた。
「わっ!お、お母さん、ギブ!ギブ!」
慌てて真理阿の身体にタップする未来。
二人は楽し気に黄色い声を交わしている。
「・・・」
そんな様子を眺めながら、伊吹は、自分の頬が弛んで行くのを感じていた。
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